「企画」
20000hit企画

椿開く瞬間(とき)

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兄様と椿


「いてえっ」
「がたがた抜かすな。男だろうよ。」
「痛いモンは痛いッス。阿近さん、もうちょっと優しくできないもんですか。」
「出来ねえな。」
 言えば阿散井は口を曲げる。それにふん、と鼻で笑って俺は阿散井の胸に押したばかりの椿をぱちんと弾いた。
 限定霊印。隊長・副隊長が現世に下りる時、その強大な霊圧を抑えるために隊花の形をした刻印を体に押す。現世の霊的な磁場に影響を与えないためのものなんだが、それを押すのは十二番隊第三席の俺の仕事だ。
 で、これが押す時結構痛いらしい。阿散井なんか、しょっちゅう俺に文句を言う。文句を言ったって痛いのは変わらないんだから、言わなきゃいいのにと思うんだが、毎回律儀にきっちり文句をつけてくる。
「さ、お前は終わりだ。」
「ありがとうございました。」 
 それから俺は、部屋の隅で待っていた人に頭を下げた。
「朽木隊長、お待たせしました。」
「よろしく頼む。」
 そう言って朽木隊長は袷をゆるめ、左肩を出す。
「失礼します。」
 近づいて手をかざす。毎回思うが、ほんとに色が白い。雪のようなって形容詞はこんな肌のためにあるんだろうって思う。動かない表情も相まって、まるで塑像のようだ。
 俺は掌に霊圧を込めた。
「押します。」
 ぱちん、と炎がはじける。白い肌に赤い椿が咲く。
 その瞬間、朽木隊長が―――――
 俺は恭しく頭を下げた。
「終わりました。」
「ご苦労。」
着物を直し、朽木隊長は静かに出て行った。その後を追おうとした阿散井に、俺は声を掛けた。
「お前な、俺が朽木隊長に触ったからって、そんな睨むんじゃねえよ。」
「え?」
「食いつきそうな目ぇしやがって。」
 言えば阿散井が慌てて自分の顔を撫でた。
「心配しなくても、あの人にゃ手は出さねえよ。」
「お、俺は別に…」
 俺は吹き出した。
「お前、ほんとに分かりやすいやつだよなあ。」
「わ、分かるって…」
「お前が朽木隊長に懸想してるのなんか丸わかりだってんだよ。」
 笑えば一気に阿散井が赤くなる。
「ま、心配すんなって。確かにきれいだが、あんまりきれいすぎてなあ。俺はもうちっと人間臭いのがいい。」
 阿散井は何か言いたそうに口をぱくぱくさせたが、結局何にも言わずに出て行った。
「…けど、そうでもないか?」
 誰もいなくなった施術室で、俺は呟く。
 限定霊印を押した瞬間、朽木隊長は、くっと眉を寄せたのだ。それは一瞬のことで、瞬きする間にもとの無表情に戻ってしまったけど。
 まるで人形に命が吹き込まれたみたいに見えた。
 それははっと胸を突かれるような――――
「ま、阿散井に蹴られるのも面倒だしな。」
 俺はたばこをくわえると火をつけた。誰もいない部屋に、紫の煙が立ち上った。 



+++++
企画第一弾で兄様と椿の落書きに小話をつけてみました。
ルキアと絡めようかとも思ったのですが、限定霊印を押してる阿近さん書きたかったのです。
兄様片肌脱ぎしているのに色っぽい話じゃなくてすみません(汗)



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